東南アジアの風土と民族
- 生計:農耕・商業・漁労・狩猟採集など。大多数の住民は水田あるいは焼畑による稲作農業に従事。
- 特産物:香辛料。
- 気候:
- 大陸部(インドシナ半島部):モンスーン気候
- 諸島部(島嶼部):湿潤熱帯気候
- 民族:
- オーストロアジア語族(モン人・クメール人・ベトナム人など)
- シナ・チベット語族(ミャンマー(ビルマ)人・タイ人など)
- オーストロネシア語族(マレー・ポリネシア語族)(マレー人・チャム人・インドネシア人・フィリピン人など)
東南アジアの風土と民族
東南アジアの地形はきわめて変化に富んでいる。この複雑な地形の地域に多くの民族が移住し住みついたため、そこの展開される歴史は多様なものとなった。この地域は大きく大陸部(インドシナ半島部)と諸島部(島嶼部)とに分けられる。マレー半島は大陸部の延長であるが、風土的・歴史的にみると諸島部に属する。
気候は大陸部が亜熱帯のモンスーン気候、諸島部は湿潤熱帯気候に属し、またいずれの地域も豊かな森林と肥沃な土地に恵まれている。
人々の生活は地方ごとに、また山地・平原・デルタといった違いに応じて多様である。生計の手段としては、農耕・商業・漁労・狩猟採集などがおこなわれているが、大多数の住民は水田あるいは焼畑による稲作農業に従事している。また香辛料は古くからこの地域の特産物として知られてきた。
東南アジアに住む主要な民族は、言語の系統からオーストロアジア語族(モン人・クメール人・ベトナム人など)、シナ・チベット語族(ミャンマー(ビルマ)人・タイ人など)、オーストロネシア語族(マレー・ポリネシア語族)(マレー人・チャム人・インドネシア人・フィリピン人など)に分けられる。
こうした複雑な民族が住む東南アジアに先進文化を送りこんだのは中国とインドである。このうち中国文化は主としてインドシナ半島東端に細長くのびるベトナム地方に伝わり、インド文化はそれ以外の大陸部と諸島部に広がった。しかし政治的にはこの地域は中国の影響下におかれることが多く、諸国は中国歴代の王朝に朝貢している。また中国の王朝の中にはこの地域に遠征軍を送るものもあった。これに対しインドがこの地域に政治的に進出したことはほとんどなく、インド文化は主として交易をつうじてもたらされた。
バラモンや仏僧は交易船に乗ってやってきて、ヒンドゥー教や仏教を伝えたのである。インド文化の流入は、しばしは「インド化」という概念でとらえられている。しかし東南アジア諸民族が多様なインド文化を受身ではなく主体的に導入したという視点を失ってはならない。二大先進文明の中間に位置し、また香辛料の産地でもある東南アジアでは、物資の集散地、水や食料の補給基地、風待ち地などの機能を果たす港市が数多く生まれ、海の道をつうじて営まれた東西交渉の歴史のうえで、重要な役割を果たしてきた。