クォ・ヴァディス は、ヘンリク・シェンキェヴィチの同名小説『クォ・ヴァディス』を壮大なスケールのスペクタクルとして映画化したもの。
監督はマーヴィン・ルロイ、出演はロバート・テイラー、デボラ・カー、ピーター・ユスティノフ、レオ・ゲン。他にもエリザベス・テイラーがカメオ出演しており、無名時代のソフィア・ローレンが奴隷役としてエキストラ出演している。アカデミー賞では作品賞の候補を始め7部門(助演男優賞は2人なので8候補)となったが、監督賞や脚本部門では候補になれず、受賞もなかった。暴君ネロを演じたユスティノフはゴールデングローブ賞を受賞し、アカデミー賞でも助演男優賞の候補となっている。
当初は、製作にジョン・ヒューストンが携わっていたが、乗り気ではなかったため降板した。また主役にグレゴリー・ペックが考えられていたが、病気のため降板した。
この作品の他にもサイレント期に作られたものは数多くあるが、この作品が『クォ・ヴァディス』の映像化作品としては最も有名である。(Wikipedia)
クォ・ヴァディス
Movie
クォ・ヴァディス (プレビュー)
あらすじ
西暦1世紀の前葉、皇帝ネロ(ピーター・ユスチノフ)の元ローマ帝国が全世界を支配していた頃。3年に渡る英国遠征を終わってマーカス・ヴィニシウス(ロバート・テイラー)に率いられたローマ軍の一隊が首都に凱旋してきた。
ネロはほかの軍隊の到着を待って大凱旋分列式を行うからといって、マーカスの引見をのばし、マーカスはその間に亡きリジア王の若い王女リジア(デボラ・カー)と知り合って、その気高い美しさに惹かれた。大分列行進の日、ネロの新しい妃ポッペア(パトリシア・ラファン)はマーカスの勇姿に邪な情熱を燃やした。だがマーカスの心は全くリジアに奪われ、ネロも許可を与えたが、当のリジアは彼の求愛を退け、忠実な怪力の護衛ウルスス(バディ・ベア)とともにローマから姿を消した。思いあまったマーカスは星占いの助力を求めてリジアが禁断のキリスト教信奉者であることを知り、部下とともに宗徒の秘密の集合場へ行き、リジアを捕らえようとしたが、ウルススの抵抗でマーカスは傷を負った。リジアは初めて心を許して彼の看護にあたり、2人は激しく愛し合うようになった。マーカスは結婚を申し込み、彼女もそれを承知したが、リジアが信仰を捨てる気持ちのないことを知って耐えられず、彼女の元を去って虚ろな心をポッペアの邪恋にまぎらそうとした。その頃ネロは、ネロポリスという新しい首都を建設するため、ローマを灰燼に帰そうと決心した。マーカスはローマが燃えていると知って戦車を駆って火の海におどり込み、逃げ場を失った群衆を安全な場所に非難させ、リジアを無事見つけ出した。
ネロの極悪非道には群衆も遂に反逆の狼火をあげた。ネロはキリスト教徒に弾圧を加え、彼らを大闘技場に引き出してライオンの餌食にしようとした。マーカスも捕らえられた。使徒ピーターとナザルスは危うくローマを逃れたが、途中キリストに会い、『主よ何処に行き給うや』(クオ・ヴァディス)と問うと『余はローマに赴きて再び十字架にかからん』と答え、ピーターは翻然悔悟してローマに引き返し、捕らわれた。獄中で彼はマーカスとリジアの結婚式を執り行い、自ら十字架上に果てた。いよいよリジアが猛牛の餌食になろうとしたが、ウルススは身をもって彼女をかばい、その牛の首を捻じ挫いた。
立腹したネロはマーカスとリジアを殺せと命じた。しかし2人はマーカスの部下に救われ、民衆はネロこそ罪人だと非難した。恐怖にかられたネロはポッペアを絞め殺し、逃げ去ろうとしたが、キリスト教徒アクテの短剣の露と消えた。暴君ネロの時代は終わり、自由の身となったマーカス、リジア、ウルススらはシシリイに旅立っていった。
歴史的におもしろい見どころ
アッピア街道
西暦1世紀前期、皇帝ネロが支配する ローマ帝国 の時代。
冒頭、マーカス・ヴィニシウス将軍(主人公: 創造された人物)3年に渡るブリテン遠征を終えてローマに凱旋した時に進んだ道は「アッピア街道」。
アッピア街道は現存するローマ街道の中で最も有名なもののひとつで、「街道の女王」の異名を持つ。
またストーリー後半、聖ペトロ(後カトリック教会初代ローマ教皇となる。)がイエスの幻影に出会うシーンもこのアッピア街道であり、現在その場所にはドミネ・クォ・ヴァディス教会が建てられている
戦闘用馬車
映画では、マーカス将軍らが勇ましく乗り回す戦闘用馬車は、ウルのスタンダードに描かれたものと大差なく、2頭の馬に一人の兵士が立って操縦するものが使われているが、将軍・副将軍以外は歩いている。
馬車に乗っての戦闘シーンは無く、街を暴走するシーンはある。
スポーツとしての戦車競争はローマ期に盛んに行われており、皇帝ネロもオリンピア競技に出場したと言われている。
キリスト教
映画では、イエス・キリストの磔刑から30年後の設定になっている。
当時のローマ帝国では、ローマ伝統の多神教を否定するキリスト教を嫌悪している者が圧倒的に多かった。
映画では、反キリスト教者皇帝ネロの統制下、禁制のキリスト教の信者であることは公にはできず、秘密の集会を行っていた。
写真はローマにやってきたイエス・キリストと直接会話をしたという「聖パウロが」にお会いしたいと、秘密の集会に集まったキリスト信者たち。
皇帝ネロは、64年に実際に起こったローマの大火を、キリスト教徒の放火として多くのキリスト教徒を処刑した。
ローマの大火
実際はネロが放火したという確実な証拠は無く、人口の増加と街の老朽化により小さな火事は日常的なことだったが、ネロが放火したという風評は実際にあった。
映画では、皇帝ネロは、ネロポリスという新しい宮廷を建設するため、宮殿以外の健在しているローマ市全部に放火させる。
さらに、親衛隊を使って燃え盛る炎の中逃げ惑う市民を閉じ込めようとする。
主人公マーカスにより市民は城内に逃げることができたが、ネロの行いに怒った市民は城に押し寄せる。
それを回避しようと、放火はキリスト教徒たちだと嘘を伝えると同時にキリスト教の根絶を図る。
皇帝 ネロ
ローマ帝国第5代皇帝ネロ。
芸術の愛好家であり、映画の中でも竪琴を弾きながら自分で作った歌を歌っている。
母、妻を殺害、キリスト教徒の迫害などから、後世からは暴君として知られるようになる。
ローマの大火後、広大な宮殿黄金宮殿(ドムス・アウレア)を建設。「グロッタ」と呼ばれていたフレスコ画は「グロテスク」装飾としてルネサンスの16世紀に、ラファエロがバチカン宮殿回廊の内装に取り入れた。