ヨーロッパの民族
中世前期にはほぼ今日のヨーロッパの基本的民族構成、すなわち地中海地方にはラテン系民族、西ヨーロッパにはゲルマン系民族、東ヨーロッパにはスラヴ系民族という分布が出来上がった。ハンガリーとフィンランドだけがウラル語系の言語を持っているのは、両国がそれぞれマジャル人・フィン人というアジア方面から移動した遊牧民を祖としてつくられたことに由来する。
ヨーロッパの民族
ヨーロッパを活動の舞台としたのは、主としてインド=ヨーロッパ語族の西方系言語を話す人々である。紀元前の地中海ではギリシア系(ギリシア人・マケドニア人)、ラテン系(ローマ人)の民族が活躍したが、その当時イベリア半島やアルプス以北の地域では広くケルト系(ガリア人・ブリトン人・スコット人など)の民族が活動していた。
しかし、紀元前後の頃になると、ケルト人はローマ人の征服と同化を受けてその活動領域を狭めていき、変わって北方のゲルマン系民族のうち西ゲルマンと東ゲルマンがライン・ドナウ両河より北の地域に広がった。そして、4〜6世紀のゲルマン民族大移動により、東・西ゲルマン諸族が西ヨーロッパ一帯に広がると、ケルト人はアイルランド島などの西方辺境地域に駆逐されていった。また、ゲルマン人が移動したのちの東ヨーロッパにはスラヴ系の民族が拡散し、東スラヴ・南スラヴ・西スラヴ族を形成することになった。なお、ゲルマン民族のうちノルマン人(ヴァイキング)とも称される北ゲルマンは、9世紀以降ヨーロッパ各地に移動し、諸国の形成に大きな影響をおよぼした。
こうして、中世前期にはほぼ今日のヨーロッパの基本的民族構成、すなわち地中海地方にはラテン系民族、西ヨーロッパにはゲルマン系民族、東ヨーロッパにはスラヴ系民族という分布が出来上がった。
ただし、その中にあって、アジア方面から移動してきたウラル語系・アルタイ語系民族(アヴァール人・マジャル人・モンゴル人・トルコ人など)の活動も見逃せない。彼らはインド=ヨーロッパ語系民族と接触・交流を繰り返し、ヨーロッパの歴史と文化に多様性を生み出すことになった。インド=ヨーロッパ語系の言語が主流のヨーロッパにあって、ハンガリーとフィンランドだけがウラル語系の言語を持っているのは、両国がそれぞれマジャル人・フィン人というアジア方面から移動した遊牧民を祖としてつくられたことに由来する。