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地中海世界の風土と民族

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地中海世界の風土と民族
地中海の沿岸部はだいたい共通の自然条件をもっていた。雨量は少なく、秋から冬に集中して降り、夏は乾燥して暑い。
ナイル下流や北イタリアの穀物農業に適した地域以外では、麦などの栽培にはたえず犂耕する労働が必要であった。しかし、オリーヴ・ブドウ・イチジクなどの果樹栽培には好適で、牧畜では牛・豚など大型家畜よりも羊・山羊の飼育に適していた。

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オリエントと地中海世界 ©世界の歴史まっぷ

ヨーロッパ・アジア・アフリカの3つの大陸に囲まれた地中海とその沿岸では、まずエーゲ海の島々とバルカン半島にオリエントの影響をうけたエーゲ文明が現れ、それが滅んだあとにギリシア・ローマの都市文明が生まれた。この文明がのちのヨーロッパ文明の直接の先祖となった。地中海の沿岸部はだいたい共通の自然条件をもっていた。雨量は少なく、ギリシアでは年間400mmから500mmで、それも秋から冬に集中して降り夏は乾燥して暑い。ナイル川を除くと大河はなく、山地が沿岸まで迫り、平野は狭く、山脈で区切られる。土地は石灰岩や片岩質でやせており、表土は浅く保水力も小さい。したがって、ナイル下流や北イタリアの穀物農業に適した地域以外では、麦などの栽培にはたえず犂耕りこうして保水力を維持するための労働が必要であった。しかし、オリーヴ・ブドウ・イチジクなどの果樹栽培には好適で、牧畜では牛・豚など大型家畜よりも羊・山羊の飼育に適していた。人々の多くは沿岸部に分かれて住み、陸の交通が困難だったために地中海の航路を利用した。

沿岸だけでなく小アジア高原・バルカンの北部・イタリア山地などに住む人々もいた。彼らは都市を形成するにいたらず、多くは沿岸部の都市と対立的関係にあった。アテネやローマのような都市によって、これら内陸の住民は奴隷の供給源とされることもあった。地中海世界にはこのような中心と周辺の支配関係が存在していた。

干ばつの危険が常にあったから、オリーヴ油を輸出して穀物を輸入するなどの努力がはらわれ、交易は活発に行われた。地中海はこのように、人々の生活に不可欠の役割を果たし、この世界の均質な都市的文明を生みだす要因となった。

地中海世界には、独特のポリス的文明が生まれた。その文明を担ったのは、農業生産をおこなう自立的な市民たちであり、オリエントの専制国家の王に支配された奴隷民とはきわだった対照をなす人たちであった。そのような人々が現れる背景には、この地域の農業が、天水に頼りつつも小規模で自営的な形態でおこなうことが可能で、そのようにして働く農民たちが多数いて、自立的な市民に成長していけたこと、王や貴族の土地所有が、平野が狭く、彼らの農業の形態も大規模なものとならなかったために平民の土地所有を圧倒するほど大きくならなかったこと、が指摘される。

この世界には新石器時代から青銅器時代にかけて人々が住んでいたが、やがて東地中海からアフリカなどにセム語系民族が、北方からはインド=ヨーロッパ語系民族が南下して広がった。そのなかでもギリシア人古代イタリア人(その一部がラテン人)がもっともめざましい役割を果たした。

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