異端運動と宗教改革 聖書の教えに従うものでも、教皇の権威を否定し、教会が認める以外のかたちで救済をめざそうとする運動は異端として厳しく弾圧された。教会の腐敗を非難し、聖遺物の崇拝や化体説を否定した14世紀オクスフォード大学のウィクリフ、その説を奉じ教会を批判した15世紀のフス、15世紀末フィレンツェにおいて改革をはかったサヴォナローラなどはいずれも異端とされた。これらの運動は成功をみなかったとはいえ、その精神において宗教改革の先駆的運動とみなすことができる。
異端運動と宗教改革
宗教改革はルネサンスとならびヨーロッパの近代精神の根源をかたちづくった運動である。時期的にもこの2つは並行して展開した。前者は聖書やキリスト教の初期の精神にたちもどって、個々人を神の前にたたせ、心の深い次元において罪を自覚し、ひたすらな信仰をもつことによる救いをめざした。後者は古典古代の文化の復活というかたちをとって、近代的な個人を覚醒させた。近代の幕開けを飾るこの2つの運動は、自我の積極的否定と徹底的肯定、人間性への悲観と楽観、宗教性と世俗性という違いはあるものの、中世的なカトリック的価値観に対して、個の自覚をめざす点では共通の性格をもっている。

サヴォナローラは1497年アレクサンデル6世(ローマ教皇)に破門され、メディチ家の策謀もあり、1498年に火刑にされた。作者不詳のこの絵は、中心に火刑にされるサヴォナローラを描き、その周辺にひそひそ話をする数人のグループがみえる。策略に満ちた当時のフィレンツェのようすを伝えている。