科学精神の誕生 ルネサンス期は近代科学の幕開けの時代でもあった。現世に価値を認めず、死後の魂の救済を求めた中世キリスト教の教えに対し、経験や感覚で確かめられる現実世界をそのまま認めようとする考えが強まり、科学と宗教が対立した。
科学精神の誕生
ルネサンス期はまた近代科学の幕開けの時代でもあった。中世カトリック教会の権威が揺らぐとともに、それが支えていた価値観も動揺した。絶対的な権威に対して懐疑精神が登場した。権威に対し自己の経験・感覚を満足させない理論を疑う科学精神の萌芽がルネサンス期に出現する。現世に価値を認めず、死後の魂の救済を求めた中世キリスト教の教えに対し、経験や感覚で確かめられる現実世界をそのまま認めようとする考えが強まった。天文学

コペルニクスは、天体観測に基づいて宇宙の中心は地球ではなく太陽であることを主張した。その考えに基づく天体は太陽を中心に水星、金星、地球、火星、木星、土星の順に円軌道を描いている。
天文学の分野では、地動説が教会の権威に抗して科学的精神への道を切り開いた。ポーランドのニコラウス・コペルニクス(1473年〜1543年)は、フィレンツェのプラトン・アカデミーに学び、古代の地動説に接し、天文学の研究に没頭、1543年『天球回転論』を刊行し地動説にたった天体の体系を構築した。それは、カトリック教会が認めていたプトレマイオスの説にもとづく天動説を否定するものであった。
解剖学
レオナルド・ダ・ヴィンチも、実験や観察によって多くの発見、発明を成し遂げた。レオナルドは人体の正確な観察に基づいて作品をつくったが、南ネーデルラント(ベルギー)のアンドレアス・ヴェサリウス(1514年〜1564年)も死体解剖に基づいて『人体構造』を著し解剖学を創始した。 スペインのミシェル・セルヴェ(1511年〜1553年)は血液循環の原理を発見した。しかしアンドレアス・ヴェサリウスはスペインで宗教裁判に掛けられ、ミシェル・セルヴェはジャン・カルヴァンの手により火刑にされている。科学と宗教が対立したのもルネサンス期であった。新しい技術
航海に 羅針盤が用いられ、大航海を可能にし、ヨハネス・グーテンベルク(1398年頃〜1468年)による印刷機(活版印刷)が、書物や文書作成を効率的にし、マルティン・ルターの思想も新しい印刷術により広められた。 封建騎士の役割を奪った 火薬と銃砲が戦争を支配した。新しい技術が時代を大きく動かしていった時代でもあった。印刷術
活版印刷術は、ドイツのマインツに生まれた、ヨハネス・グーテンベルクにより、15世紀中ごろ発明されたといわれる。金属活字はすでに14世紀朝鮮で用いられたが、グーテンベルクの印刷術は以下の3つの点で画期的なものであった。- 規格を決めて容易に交換できる金属活字を作ったこと。多量の鋳造活字は溶解した鉛と錫とアンチモンの地金を黄銅の母型に流し込んでつくられた。
- 焼きアマニ油を使った印刷用のインクを使ったこと。
- 油搾り機やぶどう搾り機にヒントを得てプレスを用いたこと。