東南アジア諸島部のイスラーム化
15世紀初め、海上交通の要衝マラッカにマレー人のイスラーム王国がおこり、スマトラ島の一部も領土に加えて、中継貿易で栄えた。このマラッカ王国の発展とともにイスラーム教はマレー半島からジャワ島など周辺の島々へと広まった。
東南アジア諸島部のイスラーム化
この時代にベトナムを除く東南アジア大陸部の諸国では、上座部仏教が民衆の間に深く浸透しつつあった。これに対し諸島部(島嶼部)では、15世紀ころから旧来のヒンドゥー教・仏教がイスラーム教にとってかわられていく。イスラーム教徒であるアラビア人やペルシア人は、早くよりインドの沿岸をまわって東南アジア海域に来航し、香辛料貿易や対中国貿易を営んでいた。インドにイスラーム政権が成立すると、イスラーム教徒であるインド人の活躍も目立つようになり、彼らが居留する東南アジアの諸港では、土着の商人や有力者の間にイスラームに改宗するものも出るようになった。
ジャワ島では15世紀末にヒンドゥー王国マジャパヒト王国が衰退したあと急速にイスラーム教が広まり、16世紀の間にほぼ全島のイスラーム化が完成している。また同じ15〜16世紀ころ、ボルネオ・セレベスおよびフィリピン南部のスルー諸島やミンダナオ島などにもイスラーム教が伝わり、スルタンの支配する国家もたてられている。
この地に成立したイスラーム王国としては、ジャワ島南部のマタラム王国(16世紀末〜1755)、ジャワ島西部のバンテン王国(1526ころ〜1813)、スマトラ島北端のアチェ王国(15世紀末〜1912)などが有力で、ヨーロッパ、アジア諸国の商船を迎え、コショウなどの香辛料貿易で栄えた。しかし、これらの王国は、17世紀以後この地に進出してきたオランダにしだいに力を奪われることになる。
なお、今日の東南アジア総人口に占めるイスラーム教徒の割合は40%であり、仏教徒・キリスト教徒の数をはるかに上回っている。またインドネシアは世界で最も多くのイスラーム教徒人口をもつ国である。