近代ヨーロッパの成立
15〜16世紀のヨーロッパは、中世カトリックの伝統的世界観が大きくゆらぎ、その後の世界史に大きな影響をもつ新航路の発見・ルネサンス・宗教改革という3つの激流がヨーロッパの歴史を彩った時代である。「近代」の出発点とされるのが、この15〜16世紀のヨーロッパなのである。
近代ヨーロッパの成立
15〜16世紀のヨーロッパは、中世カトリックの伝統的世界観が大きくゆらぎ、その後の世界史に大きな影響をもつ新航路の発見・ルネサンス・宗教改革という3つの激流がヨーロッパの歴史を彩った時代である。そして今、われわれが「ポスト=モダン」などという言葉で過去のものにしようとしている「近代」の出発点とされるのが、この15〜16世紀のヨーロッパなのである。
航海技術の発展と地理学上の知識の増大は、ヨーロッパ人の海外への発展を可能にした。スペイン・ポルトガルなど王権による国家の統一を成し遂げた国が、香料や富を求めてアジアにいたる新しい航路の探検に乗りだした。ヴァスコ・ダ・ガマの東インド航路発見、クリストファー・コロンブスの「新大陸」への航路発見、マゼラン船隊(フェルディナンド・マゼラン)の世界一周など、ヨーロッパ人が新航路により世界をひとつに結びつけた。ヨーロッパ人は世界への目を開き、東インド貿易、新大陸植民地経営などを進めた。価格革命などヨーロッパ世界自身も大きな変化にさらされた。
ルネサンスは14世紀から16世紀に、イタリアからヨーロッパに広がった文化運動である。ペトラルカ、デジデリウス・エラスムス、トマス・モアなどヒューマニストといわれる文人は、ギリシア、ローマの古典古代文化から「人間的なもの」を学び、現実世界により多くの関心と批判の目をむけた。ルネサンスは建築・彫刻・絵画など美術の世界にも、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなどの巨匠をはじめ、すぐれた芸術家を輩出させた。個性や個人の価値が自覚され、人間がその能力の無限の可能性を見出し、ルネサンスの万能人が活躍した。世界と人間に対する関心は、天文学・物理学・解剖学などの分野においても新しい科学精神を生みだした。
宗教改革は、古典古代研究に支えられたキリスト教の教義研究、ローマ・カトリック教会の腐敗と堕落に対する批判から始まった運動である。ドイツにおいてマルティン・ルターが、ローマから分離したプロテスタント教会をつくり、イギリスでは離婚をめぐる国王と教皇の対立を契機としてイギリス国教会が成立した。ジュネーヴではジャン・カルヴァンの指導する改革運動が成功をおさめ、カルヴァン主義の新教はフランスをはじめヨーロッパ各地に広がった。1530年代からカトリック教会も新教に対抗して、内部改革に取り組んだ。トリエントの公会議では、教義を再確認し、異端と戦う姿勢を明らかにした。イエズス会は、新教の拡大を阻止しようとした。
近代ヨーロッパの成立年表
イタリア・ルネサンス(14〜16世紀) | |
1450頃 | ヨハネス・グーテンベルク、活版印刷技術発明 |
1488 | バルトロメウ・ディアス、喜望峰到達 |
1492 | スペイン、グラナダを占領(レコンキスタ完了) |
クリフトファー・コロンブス、アメリカに到達 | |
1494 | トルデシリャス条約(スペイン・ポルトガル) |
1495 | レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」制作(〜1498頃) |
1498 | ヴァスコ・ダ・ガマ、カリカットに到達 |
1517 | マルティン・ルター、九十五カ条の論題発表 |
1519 | フェルディナンド・マゼランの部下、世界周航(〜1521) |
1521 | エルナン・コルテス、アステカ帝国征服 |
イタリア戦争(第三次イタリア戦争 〜1526) | |
1524 | ドイツ農民戦争 |
1529 | オスマン軍の第一次ウィーン包囲 |
1533 | フランシスコ・ピサロ、ペルーのインカ帝国征服 |
1534 | 国王至上法発布(イギリス国教会成立) |
イエズス会設立 | |
1541 | ジャン・カルヴァン、ジュネーヴ市政掌握 |
1543 | ニコラウス・コペルニクス『天球回転論(地動説)』刊 |
1545 | トリエント公会議(〜1563) |
16世紀後半、価格革命おこる | |
1555 | アウクスブルクの和議(ルター派の信仰認められる) |
1558 | エリザベス1世の即位(〜1603) |
1559 | カトー・カンブレジ条約(イタリア戦争終結) |