大戦の結果
戦争の破壊と犠牲、そして人心の荒廃はヨーロッパの陥落を目の当たりに現出させるものであり、ヨーロッパ近代の価値観崩壊の感情をもたらした。
大戦の結果
1914年夏、ヨーロッパの若者が祖国防衛の愛国的熱情に燃え ❶ 、落ち葉の散るころには故郷に帰れるといって出かけた戦争は4年以上にわたる総力戦となった。戦争の長期化と新兵器の投入によって膨大な数の死傷者が生まれたが、塹壕のなかで機関銃の一斉射撃やすさまじい砲撃音を体験した兵士たちのなかには神経症の後遺症に苦しむ者も少なくなかった。貴族・地主・軍部の保守エリートは国家指導の誤りを批判され、総力戦を支えた民衆や女性の発言力は増大した。各国で女性参政権を含む普通選挙制度が導入されて大衆民主主義が成立したのはその表れであった。多数の国民の意思を反映する政治は、アジア・アフリカなど植民地や従属地域の住民の意思を尊重する政治にも通ずる。その意味で、ソヴィエトとアメリカ合衆国が民主主義と民族自決の新しい国際政治の理念を掲げて登場したことは、伝統的なエリート政治や植民地支配を打破しようとする世界中の人々に歓迎された。また、戦争の破壊と犠牲、そして人心の荒廃はヨーロッパの陥落を目の当たりに現出させるものであり、ヨーロッパ近代の価値観崩壊の感情をもたらした。
❶ 他方で、国内のスパイ狩りがおこなわれたり、伝統的な民族的偏見が助長され、敵性語は追放された。ロシアの首都サンクトペテルブルクはドイツ語風の呼び名からロシア名のペトログラードに変えられた。イギリスのハノーヴァー家を引きつぐサックス=コーバーグ=ゴータ家は現在のウィンザー家に改められた。
第一次世界大戦年表
ヨーロッパ・アメリカ | アジア | |||
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1908 | 10 | 澳、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ併合 | 7 | 青年トルコ革命 |
1911 | 7 | 第2次モロッコ事件 | 10 | 辛亥革命 |
9 | イタリア=トルコ戦争(〜12.10) | |||
1912 | 10 | 第1次バルカン戦争(〜13.2) | 1 | 中華民国成立 |
1913 | 6 | 第2次バルカン戦争(〜8) | 7 | 中国第二革命 |
1914 | 6 | サライェヴォ事件 | ||
7 | 墺、セルビアに宣戦 | |||
8 | 独、ロシア・フランスに宣戦、ベルギー侵入 | 8 | 日本、ドイツに宣戦 | |
英、ドイツに宣戦 | インド参戦 | |||
タンネンベルクの戦い | ||||
9 | マルヌの会戦、仏が独を阻止 | 10 | オスマン帝国、同盟国側に参戦 | |
11 | 日本、青島攻略 | |||
1915 | 4 | イープルの戦い(毒ガス初使用) | 1 | 日本、二十一カ条の要求 |
5 | 伊、三国同盟破棄、オーストリアに宣戦 | 中国、文学革命運動 | ||
ルシタニア号事件 | 9 | フセイン・マクマホン協定 | ||
10 | ブルガリア、同盟国側に参戦 | 12 | 袁世凱帝政宣言→第三革命 | |
1916 | 2 | フェル弾要塞攻防戦(仏が死守) | ||
5 | ユトランド沖海戦 | 5 | サイクス・ピコ協定 | |
6 | ソンムの戦い(連合軍の攻勢) | |||
1917 | 1 | 米、ウィルソン大統領「勝利なき平和」 | ||
2 | 独、無制限潜水艦作戦 | |||
3 | 露、二月革命(三月革命) | |||
4 | 米、ドイツに宣戦 | 7 | ロレンス、アラビアで蜂起を組織 | |
8 | 中国、ドイツに宣戦 | |||
9 | 孫文、広東軍政府成立(〜20) | |||
11 | 露、十月革命(十一月革命)「平和に関する布告」 | 11 | バルフォア宣言 | |
石井・ランシング協定 | ||||
1918 | 1 | ウィルソン大統領「十四カ条」提案 | ||
3 | ブレスト=リトフスク条約 | |||
9 | ブルガリア、休戦 | 8 | 日本、シベリア出兵 | |
10 | オスマン帝国、休戦 | |||
11 | 墺、休戦 | |||
ドイツ革命 | ||||
第一次世界大戦終結 | ||||
1919 | 1 | パリ講和会議 | 3 | 朝鮮、三・一独立運動 |
3 | コミンテルン結成 | 英、インドにローラット法 | ||
6 | ヴェルサイユ条約調印 | 5 | 中国、五・四運動 | |
7 | ソヴィエト、カラハン宣言 |