航海と船
Cantino planisphere 1502, earliest surviving chart showing the explorations of Columbus to Central America, Corte-Real to Newfoundland, Gama to India and Cabral to Brazil. Tordesillas line depicted, Biblioteca Estense, Modena ©Public Domain

航海と船

大航海時代の数々の新航路発見の探検を可能にしたのは、航海術と造船技術の進歩であった。航海にはポルトラーノ図と呼ばれる海図が利用され、オールと漕ぎ手を必要とする古代以来のガレー船からキャラヴェル船、大型のナウ船、より巨大で遠洋航海に適したキャラック船へと進歩した。

航海と船

航海術

大航海時代の数々の新航路発見の探検を可能にしたのは、航海術と造船技術の進歩であった。航海にはポルトラーノ図と呼ばれる海図が利用された。さまざまな航海の諸発見や調査の結果は、海岸線・地名を含めて、当時つくられた手書きの海図に詳細に記録されている。

大航海時代の地図

大航海時代の船乗りにとって、海図や地図は欠かすことのできないものであった。中世末から地中海の海上交通が発達し、羅針盤が発明されると、所要の航角を求めるため地図の方位盤から多数の方位線を描いたポルトラーノ(水先案内人の意)と呼ばれる海図がさかんに用いられた。この型の海図では、内陸の細部はほとんど示されていないが、海岸線・海港・岬などは精緻に描かれている。15世紀初頭、古代のプトレマイオスの地理書や世界地図がビザンツ帝国から西欧に伝えられ、マルコ・ポーロにより伝えられたアジアの国々もヨーロッパ人の世界像のなかに取り込まれた。1492年に作成されたマルティン・べハイムの地球儀は、現存する最古のものである。当時の地図には当然、アメリカ大陸はなく、アジアは奇妙な形で描かれている。1507年の作とされるヴァルトゼー・ミュラー(マルティン・ヴァルトゼーミュラー)の木版画の世界地図は、アメリカという地名が見出される最初のものである。ヴァスコ・ダ・ガマ、コロンブス、マゼランなどの探検で世界地図はしだいに正確になっていくが、18世紀のジェームズ・クックの探検までは南半球の大部分はまだ未知で、巨大な南方大陸(テラ・アウストラリス)(メガラニカ)が存在するものと想像されていた。メルカトルは1569年、世界図に用いられる正角円筒図法(メルカトル図法)を考案し、ボルトラーノにかわる海図の発達に貢献した。

ポルトラーノ図
ポルトラーノ図(カタルーニャ世界図, 部分, 14世紀/パリ国立図書館蔵)

ポルトラーノ図

中世後期の商業の発展にともない、港から港へのナビゲーション機能をもった地図が作成された。「ポルトラーノ」とは港の本という意味で、コンパスをあてて方角やルートを確認できるように、32本(16本の場合もある)の方位船が記され、沿岸部の記載がきわめて詳細である。この図はペドロ3世(アラゴン王)がシャルル5世(フランス王)に献上したポルトラーノ型の地図。

参考 山川 詳説世界史図録

船隊技術

ガレー船キャラベル船キャラック船キャラック船
キャラベル船キャラック船サンタ・マリア号
人力でオールを漕いで進む軍艦。およそ3本のマストを持つ小型の帆船ポルトガルではナウ船と呼ぶ。遠洋航海に適するような形態を備えたキャラック船
古代から地中海・バルト海航海王子エンリケからコロンブスのピンタ号・ニーナ号などフェルディナンド・マゼランのビクトリア号コロンブスのサンタ・マリア号

船に関していえば1400年ころまではオールと漕ぎ手を必要とする古代以来のガレー船のほか、1本マストには四角帆をはった150トン前後のハンザコックが北海・バルト海で、2本マストの2枚の三角帆(ラティーンセール)をはった商船が地中海で用いられた。15世紀初頭に3本マストの船が出現する。エンリケ航海王子のもとで働いた船長たちはキャラヴェル船を用いている。これには3本のマストに大小3枚の三角帆をはったキャラヴィル・ラティナ、四角い帆をはったキャラヴェル・レドンタがあったが、従来の船より細長くなっていて、大洋を航海するうえで性能がよくなっている。トン数は50トンから200トンくらいのものであった。クリストファー・コロンブスやバルトロメウ・ディアスもキャラヴェル船を用いた。コロンブスが第1回航海で用いたピンタ号・ニーナ号はキャラヴェル船であった。しかし、東インドの航路のような長い航海ではキャラヴェル船では積載量が小さすぎた。1450年ころには、それよりも大型の400トン級のナウ船が登場する。コロンブスのサンタ・マリア号はナウ船であった。ヴァスコ・ダ・ガマの航海にもナウ船が用いられている。スペインとアメリカ大陸を結んだ艦隊やエリザベスの艦隊はナウ船の変種であるやや大型のガレオン船を主力としていたようである。ついで現れるのが、より巨大なキャラック船である。のちには7層ないし8層の甲版の100トン以上のものがつくられる。これは四角帆と三角帆を組み合わせ、遠洋航海に適するような形態を備えたものである。

このように大航海時代をつうじて航海術や船隊技術はたえず進歩し、それが長く困難な多くの航海を可能にしたのである。

近代ヨーロッパの成立年表

 イタリア・ルネサンス(14〜16世紀)
1450頃ヨハネス・グーテンベルク、活版印刷技術発明
1488バルトロメウ・ディアス、喜望峰到達
1492スペイン、グラナダを占領(レコンキスタ完了)
 クリフトファー・コロンブス、アメリカに到達
1494トルデシリャス条約(スペイン・ポルトガル)
1495レオナルド・ダ・ヴィンチ最後の晩餐」制作(〜1498頃)
1498ヴァスコ・ダ・ガマ、カリカットに到達
1517マルティン・ルター、九十五カ条の論題発表
1519フェルディナンド・マゼランの部下、世界周航(〜1521)
1521エルナン・コルテス、アステカ帝国征服
 イタリア戦争(第三次イタリア戦争 〜1526)
1524ドイツ農民戦争
1529オスマン軍の第一次ウィーン包囲
1533フランシスコ・ピサロ、ペルーのインカ帝国征服
1534国王至上法発布(イギリス国教会成立)
 イエズス会設立
1541ジャン・カルヴァン、ジュネーヴ市政掌握
1543ニコラウス・コペルニクス『天球回転論(地動説)』刊
1545トリエント公会議(〜1563)
 16世紀後半、価格革命おこる
1555アウクスブルクの和議(ルター派の信仰認められる)
1558エリザベス1世の即位(〜1603)
1559カトー・カンブレジ条約(イタリア戦争終結)