ボロブドゥール遺跡
ジャワ島のボロブドゥールの仏教寺院群は、シャイレンドラ朝時代の8〜9世紀頃に築かれた世界最大規模の仏教遺跡ボロブドゥール寺院と関連寺院群からなる。
自然の丘を生かして築かれたピラミッド状のボロブドゥール寺院は、下から順に約115m四方の基壇、5層の方形壇、3層の円形壇が重なった構造をもつ。これは大乗仏教の宇宙観である「三界」を表現していると考えられている。頂上には釣り鐘形のストゥーパがそびえ、立体曼荼羅といった様相を呈する。
ボロブドゥール遺跡
立体曼荼羅のような構造をもつ寺院
自然の丘を生かして築かれたピラミッド状のボロブドゥール寺院は、下から順に約115m四方の基壇、5層の方形壇、3層の円形壇が重なった構造をもつ。これは大乗仏教の宇宙観である「三界」を表現していると考えられている。頂上には釣り鐘形のストゥーパがそびえ、立体曼荼羅(曼陀羅)といった様相を呈する。
くわしく学ぶ世界遺産300<第2版>世界遺産検定2級公式テキスト
概要
ボロブドゥール遺跡は、中部ジャワの中心都市ジョグジャカルタの北西約42kmに所在し、巨大なムラピ火山に囲まれた平原の中央に立地する。遺跡総面積はおよそ1.5万m2。高さはもともと42mあったが、現在は破損して33.5mになっている。
シャイレーンドラ朝の時代、大乗仏教を奉じていたシャイレーンドラ王家によって、ダルマトゥンガ王治下の780年頃から建造が開始され、792年頃に一応の完成をみたと考えられるが、サマラトゥンガ王(位812年~832年)のときに増築されている。
ボロブドゥールは、寺院として人びとに信仰されてきた建造物であるが、内部空間を持たないのが際だった特徴となっている。最も下に一辺約120mの基壇があり、その上に5層の方形壇、さらにその上に3層の円形壇があり、全体で9層の階段ピラミッド状の構造となっている。この構造は、仏教の三界をあらわしているとされる。
5層の方形壇の縁は壁になっていて、露天の回廊がめぐらされる。方形壇の四面中央には階段が設けられており、円形壇まで登れるようになっている。
総延長5kmにおよぶ方形壇の回廊には、仏教説話にもとづいた1460面におよぶレリーフが時計回りにつづいている。
仏像は、回廊の壁龕(くぼみ)に432体、3段の円形壇の上に築かれた釣鐘状のストゥーパ72基の内部に1体ずつ納められており、合計では504体ある。
レリーフは、その構図の巧みさ、洗練された浮き彫り彫刻の技法、細部表現の優雅さで知られ、仏像とともにインドのグプタ様式の影響が強く認められるとされる。
ボロブドゥールはまた、その形状から世界最大級のストゥーパ(仏塔)でもある。
ストゥーパとは、釈迦の遺骨や遺物などをおさめた建造物であるが、ボロブドゥールは、さらにその内部にも多数のストゥーパを有する特異な構造を呈している。
ストゥーパの釣鐘状になっている部分は、一辺23cm大の石のブロックを交互に積み上げ、中の仏像を拝することができるようになっている。漆喰などの接着剤の類を一切用いることなく積まれている。
ストゥーパ72基は、全体では三重円を描くように並び、頂上には釈迦の遺骨を納めたとされる、ひときわ大きなストゥーパがあり、天上をめざしている。この中心塔には大日如来を置かず空っぽにしており、大乗仏教の真髄である「空」の思想を強調しているとされ、ジャワ仏教の独自性が示される。
ボロブドゥールは、それ自体が仏教的宇宙観とくに密教的宇宙観を象徴する巨大な曼荼羅といわれ、一説には、須弥山を模したものとも考えられている。ボロブドゥールは、その規模と構造の特異性よりアンコール・ワットと並び、東南アジアの代表的な仏教遺跡とされている。
2006年5月27日に起こったジャワ島の大地震で寺院の石塔の一部が崩れるなどの被害を受け、学者群が調査のあと、修復を予定している。