価格革命
大航海時代の世界の一体化にともなって、アメリカ大陸の安価な銀の大量の流入が全ヨーロッパ的な物価上昇をもたらし、ヨーロッパの経済秩序に大きな変化を与えたこと。16世紀をつうじて、物価を数倍に引き上げることになったこのインフレには、ヨーロッパ全域における人口の激しい増加という原因もあったが、この物価騰貴によって額面の固定した地代に依存する伝統的な封建貴族は苦境にたち、資本家的な活動をする新たなタイプの地主や農業経営者は、大きな利潤を獲得するようになった。
価格革命
近代ヨーロッパの成立
ヨーロッパ世界の拡大
大航海時代がもたらしたもの
アメリカ大陸の安価な銀の大量の流入は全ヨーロッパ的な物価上昇をもたらし、ヨーロッパの経済秩序に大きな変化を与えた。いわゆる価格革命と呼ばれるものである。南ドイツの銀鉱山は衰退した。北イタリア都市を中心とする地中海貿易、北ドイツ都市を中心とするバルト海貿易は、スペイン・ポルトガル・オランダ・イギリス・フランスなどの大西洋を中心とする貿易活動に対して相対的に地位を低下させた。
ヨーロッパの遠隔地貿易は、アメリカ大陸との貿易、新航路をつうじての香辛料などアジアとの貿易により、商品の種類、取引額などを拡大させ、貿易活動の中心は大西洋沿岸諸国に移ったのである。大航海時代に生じたこうした世界的規模の商業や貿易システムの大変革は商業革命と呼ばれる。アメリカ大陸へのヨーロッパ人の移住、ヨーロッパ文化の移植が進むにつれて、大西洋はヨーロッパ世界の内海となった。
一体化する世界
アメリカ銀が大量に流入したことは、スペインのみならずヨーロッパ全域、さらにはアジアを含む世界全体に大きな影響を与えた。近世初期の世界の金銀の生産では、アフリカのサハラの金や南ドイツのティロルの銀が知られていたが、ヨーロッパ人の対外進出にともなって、メキシコとペルーの銀および日本の貴金属が、大量に供給されることになった。こうした貴金属のなかでも、銀は先住民やアフリカから連れてこられた黒人奴隷の強制労働によって生産され、イギリス人などの海賊行為(私拿捕)をさけるために、護衛船団を組んでスペインに届けられた。
その結果、銀の流通量が急速に増加したことが一因となって、ヨーロッパで激しいインフレーション(いわゆる「価格革命」 大航海時代がもたらしたもの)がおこった。16世紀をつうじて、物価を数倍に引き上げることになったこのインフレには、ヨーロッパ全域における人口の激しい増加という原因もあったが、いずれにせよ、この物価騰貴によって額面の固定した地代に依存する伝統的な封建貴族は苦境にたち、資本家的な活動をする新たなタイプの地主や農業経営者は、大きな利潤を獲得するようになった。