ヘロドトス (Herodotus) B.C.484〜B.C.425
小アジア出身のギリシア人歴史家。「歴史の父」と称される。ペルシア戦争を主題とした『歴史』を著し、これが現存する最古の歴史書とされる。
ヘロドトス
- 古代ギリシアの歴史家。歴史書「歴史」を記す。
- 小アジア出身のギリシア人歴史家。「歴史の父」と称される。ペルシア戦争を主題とした『歴史』を著し、これが現存する最古の歴史書とされる。
ドーリア系ギリシア人であり、小アジアのハリカルナッソス(現ボドルム)に生まれた。
歴史
ヘロドトスはペルシア戦争(紀元前499年-紀元前449年)後、諸国を遍歴して『歴史』(全9巻)を著した。
『歴史』の記述はギリシアはもちろんペルシア、リディア、エジプトといった古代オリエント世界の歴史、地理まで及ぶ。ヘロドトスが自分で実際に見聞きしたことが集められており、一見渾然としてはいるが、それらがギリシアによるペルシア戦争勝利へのストーリー内で巧みに配置されており、読み物としておもしろいうえにわかりやすく書いてある。しかし、伝聞のためか疑わしい話も少なからず盛り込まれているため、「歴史」の信憑性が疑われることもあり、研究としての歴史はトゥキュディデスから始まったとみなす説もある。
ヘロドトスはギリシアの神々の意志や神託の結果を尊重し、ギリシア人の立場から『歴史』を物語的叙述で著したが、この点は後に現れるアテナイの歴史家トゥキュディデスが著した実証的な『戦史』と対比的に捉えられている。
『歴史』はヨーロッパで最も古い歴史書の1つであり、後世まで読み継がれたほか、中世ビザンティン時代のギリシア人たちもヘロドトスに倣った形式で歴史書を書いた。現在でも古代ギリシア、古代オリエント、古代エジプトの歴史研究の上で欠かせない書物の1つとなっている。
なお、「エジプトはナイルの賜物」という言葉はヘロドトスが『歴史』(巻二、五)に書いているが、元はヘカタイオスの言葉である(この「エジプト」はナイルデルタを指しており、デルタがナイル川の運ぶ泥が滞積したものであることは当時から知られていた)。
物語として歴史を綴った「歴史学の父」
ヘロドトスは、小アジア(トルコ)の名家に生まれた。キケロをして「歴史学の父」といわしめたヘロドトスは、ペルシア戦争の叙述を生涯のテーマとした。ヘロドトスは、キレネ(北アフリカ)からエジプト、フェニキア、黒海北岸までの大旅行を敢行。そこでの見聞を豊富に交えて、アケメネス朝ペルシアとギリシアの戦争の一部始終をその背景とともに書き残した。タイトルは「歴史」。これはギリシア語で「探求」も意味する言葉だ。
「歴史は神の意志によって動かされる。」これがヘロドトスの歴史観である。ヘロドトスはアケメネス朝ペルシアの滅亡を、驕り栄えるものに対する神の嫉妬として、極めて物語風に描いている。