獅子狩文様錦 (四騎獅子狩文錦) (7世紀前半)
馬上の人物がふり向きざまに矢を射る戦法は、パルティアン=ショットとよばれる。図柄としてはアッシリアの頃からあらわれ、ササン朝で盛んに用いられた。王が王冠を載せたままの姿で馬上から獅子を射る姿は、銀皿の文様に数多く、しかも王冠から王名が判別されるので獅子狩文には王権を象徴する意味がある。法隆寺に伝来した「獅子狩文様錦」は、4騎のペガサスに乗る狩猟者と4頭の獅子を円形に配置した文様が3個ずつ5段に並ベられた図柄で、7世紀前半に唐で製作され、日本にもたらされたものと考えられている。国宝。
法隆寺獅子狩文様錦
法隆寺に伝来。円形を連ねた連珠文の縁の中に4頭の獅子に弓を引き絞る4騎の猟銃者を配した錦。西アジアに多い狩猟文錦の一つ。ただし、製作は唐代。
国宝・重要文化財データ
- 名称: 四騎獅子狩文錦
- 員数: 1面
- 種別: 工芸品
- 国: 中国
- 時代: 唐
- 寸法・重量: 縦250.0 横134.5 (㎝)
- 品質・形状: 綾組織の緯錦。主文は、径45㎝ほどの連珠円文のなかに花樹を中心として上下左右に翼馬にまたがり振り返りながら獅子を熬る四人の人物を左右相称に配す。主文の間地には、中心に花文をもつ連珠円文の周囲に忍冬文風の花唐草文を配している。
- 国宝・重文区分: 国宝
- 重文指定年月日: 1909.09.21(明治42.09.21)
- 国宝指定年月日: 1951.06.09(昭和26.06.09)
- 所在都道府県: 奈良県
- 所有者名: 法隆寺
- 解説文: 連珠円文の中に左右相称の獅子狩文を配した独特の文様、さらに人物の容貌や頭冠の形などに、ササン朝ペルシアの影響が見られるが、馬の尻部分に「吉」「山」の漢字が織り込まれていることから、中国で製織されたものと考えられる。複雑な文様構成であるが、文様の崩れや形式化もなく、見事な織技が見られる。
獅子狩文様錦
馬上の人物がふり向きざまに矢を射る戦法は、パルティアン=ショットとよばれる。図柄としてはアッシリアの頃からあらわれ、ササン朝で盛んに用いられた。王が王冠を載せたままの姿で馬上から獅子を射る姿は、銀皿の文様に数多く、しかも王冠から王名が判別されるので獅子狩文には王権を象徴する意味がある。法隆寺に伝来した「獅子狩文様錦」は、4騎のペガサスに乗る狩猟者と4頭の獅子を円形に配置した文様が3個ずつ5段に並ベ
られた図柄で、7世紀前半に唐で製作され、日本にもたらされたものと考えられている。縦250cm 横134.5cm 部分 奈良県 国宝
オリエントと地中海世界
古代オリエント世界
パルティアとササン朝の文化
ササン朝時代には建築・美術・工芸の発達がめざましかった。それもアケメネス朝以来のイランの伝統的な様式に、インドやギリシア、ローマの要素が加味されて国際的な性格を備えていた。
磨崖の浮き彫りや漆喰を使った建築にすぐれた手腕を発揮しているが、もっともよく知られているのは工芸美術で、金・銀・青銅・ガラスを材料とする皿、盃、水差し、香炉、鳥獣・植物の模様を織りだした絹織物、彩釉陶器などがとくに優れている。
ササン朝美術の様式や技術は、次のイスラム時代に継承されるとともに、西方では東ローマ帝国を経て地中海地方に、東方では南北朝・隋唐時代の中国を経て、飛鳥時代・奈良時代の日本にまで伝来して、各地の文化に影響を与えた。
日本では、正倉院の漆胡瓶や白瑠璃碗(カットグラス)、法隆寺の獅子狩文様錦などが、その代表例である。
ササン朝と法隆寺の「獅子狩」図案
参考 詳説世界史研究