玉虫厨子
奈良県斑鳩町の法隆寺が所蔵する飛鳥時代(7世紀)の仏教工芸品。装飾に玉虫の羽を使用していることからこの名がある。玉蟲厨子の名称で国宝に指定されている。
玉虫厨子
法隆寺蔵。台座の須弥座の上に仏像を入れる宮殿を載せた形の工芸品。宮殿は飛鳥建築をしのばせ、須弥座周囲の透彫の飾り金具の下に玉虫の羽を伏せてある。
国宝・重要文化財データ
- 名称 玉蟲厨子
- 員数 1躯
- 種別 工芸品
- 国 日本
- 時代 飛鳥時代
- 寸法 総高233㎝
- 品質・形状
四部より成り、基壇部の上に方柱状の須弥座を立て、その上に中台を置き、これに宮殿を安置する。
宮殿は、単層入母屋造で、正面と両側に扉を付し、方柱・雲肘木を用い、屋根は錣葺で鴟尾を上げる。
外面は黒漆で木口、柱、桁、框などは、透彫の金銅金具を張り、そのしたには玉虫の羽を伏せる。
宮殿内部は金銅押出千仏が張られている。
正面扉には、二天像を、左右扉は各二菩薩を、後ろ壁には多宝塔を漆描で表す。須弥座は正面に舎利供養図を、右側に捨身飼虎図、左側に施身聞偈、後面に須弥山図を表し、いずれも各色の漆で描いている。 - 区分 国宝
- 重文指定日 1897年12月28日
- 国宝指定日 1951年6月9日
- 所在都道府県 奈良県
- 所有者 法隆寺
- 解説 主尊の安置と荘厳が一体化した信仰の結晶である。図案的構成や、細部の技法などに中国六朝時代の遺品に通じる部分があり、飛鳥時代の様式を示す、建築や木工、金工、漆工等の総合製作で、それぞれの優れた技法が渾然と融合された最も傑出した遺品である。
須弥座絵
舎利供養図
施身聞偈図
捨身飼虎図
須弥山世界図
これらの絵画は朱を主体として、黄、緑を含むわずか3色で描かれている。技法については、漆絵説と顔料を荏胡麻油で溶いた密陀絵とする説、2つの技法を併用しているとする説があるが、併用説が有力となっている。いずれにしても、出土品ではない伝世の漆工芸品としては日本最古の遺品であり、数少ない飛鳥時代絵画の遺品としても重要である。法隆寺の「昭和資財帳」作成の際の再調査では、厨子の蓮弁部分に截金の痕跡が発見され、截金使用の最古例としても注目される。
須弥座の絵画のうち「捨身飼虎図」と「施身聞偈図」はジャータカ、つまり釈迦の前世の物語である。「捨身飼虎図」は、薩た王子(「た」は土篇に「垂」)が飢えた虎の母子に自らの肉体を布施するという物語で、出典は『金光明経』「捨身品」である。この図は「異時同図法」の典型的な例としても知られ、王子が衣服を脱ぎ、崖から身を投げ、虎にその身を与えるまでの時間的経過を表現するために、王子の姿が画面中に3回登場する。「施身聞偈図」の出典は『涅槃経』「聖行品」である。画風は素朴であり、山、崖などを表現する際に「C」字形の描線を多用するのが特色である。様式的には、中国魏晋南北朝時代の絵画に近い。
参考 Source Wikipedia