キングダム・オブ・ヘブン
キングダム・オブ・ヘブン
キングダム・オブ・ヘブン( Kingdom of Heaven )は、キリスト教徒、ムスリム(イスラーム徒)双方の聖地イェルサレムが舞台。
時代背景
第1回十字軍でイェルサレムを占領し、十字軍国家イェルサレム王国を樹立した際、ムスリムとユダヤ教徒の大虐殺を行い、さらにムスリム、ユダヤ人のイェルサレム居住を禁止しました。
それから100年後の1184年が本作のスタートとなります。
中世フランス王国はカペー朝フィリップ2世(尊厳王)がまだ19歳頃の時代です。
東ローマ帝国はコムネノス朝アンドロニコス1世コムネノスが、強権的な改革から貴族や国民の反乱で処刑され、イサキオス2世のアンゲロス朝が成立したばかりの頃になります。イサキオス2世は帝国財政を破綻招きます。
ヨーロッパは慢性的な圧政と貧困に苦しめられていました。多くの農民も貴族も、運と救いを求めて遠い聖地を目指そうと、十字軍に参加していきました。
映画の登場人物と歴史に登場する実際の人物
バリアン・オブ・イベリン
主人公はバリアン・オブ・イベリン(ディブラン)でイブラン家のバリアンの名前を借りていますが、イェルサレム籠城の際に指導者として籠城、開城の指揮を取った件以外はほとんどがフィクションです。
シビーユと婚姻話があったのは事実ですが、相手はバリアンの兄ボードゥアンであり、実際のバリアンはマリア・コムネナ(アモーリー1世の2番目の妻)と結婚しています。
イブラン家(イベリン家)は、中世イェルサレム王国領内のイブラン城から名を取った貴族で、十字軍国家のイェルサレム王国、キプロス王国において重臣として活躍た名家です。
俳優: オーランド・ブルーム
イェルサレム王国王ボードゥアン4世
13歳で王に就いたが、ハンセン病に冒されていました。本作では仮面を付けていますが、仮面を使用していたという歴史的な記録はありません。
また、モンジザールの戦いで、16歳の時にボードゥアン4世がサラディンを破ったとされています。本作には登場しませんが、モンジザールの戦いでボードゥアン4世は、ハンセン病に蝕まれ、爛れた身体の少年が先頭に立って多勢のサラディン軍に立ち向かう姿にイスラム軍の士気は上がり、逆にサラディン軍は圧倒され、90%の兵を失ったとされています。後にボードゥアン4世とサラディンは講和の協定を結び、キリスト教徒イスラームが融合できる争いのない世界を築く努力をします。
映画の中でサラディンに「偉大な王」と言われます。実際も9歳から古典学者・アラビア語学者・歴史家であるギヨーム・ド・ティールから教育を受けていて、頭の回転の良い、才能豊かな人格者であったようです。
俳優: エドワード・ノートン
ルノー・ド・シャティヨン
十字軍国家のアンティオキア公国のアンティオキア女公と結婚したためアンティオキア公となりましが、東ローマ帝国支配下であったキプロス島を襲撃・強奪したり、島の正教会の聖職者全員の鼻をそぎ落としたりと悪事を重ねた後、ヌールッディーンの捕虜となり15年間幽閉されます。
多額の身代金で開放された後、イェルサレム王国に現れ、今度は別の結婚によりカラクの城を手に入れ、カラクを拠点とするトランスヨルダン領の領主となり、イェルサレム王の軍の指揮官にもなります。
ボードゥアン4世とサラディンの間に和平が結ばれていたにも関わらず、サラディンの隊商を襲撃・略奪を繰り返します。かなりの対イスラム強硬派でした。
目に余るルノーの行いは、ヒッティーンの戦いに繋がり、最後はサラディン自らの手で処刑されることになります。
俳優: ブレンダン・グリーソン
シビーユ(シビラ)
イェルサレム王国王ボードゥアン4世の姉ですが、ボードゥアン4世がハンセン病で子供いなかったため、ボードゥアン4世の死後イェルサレム女王となります。息子
ボードゥアン5世の父親である最初の夫が亡くなったため、王国最大の軍勢とテンプル騎士団の支援があるのギー・ド・リュジニャンが夫となります。
本作では、バリアン・オブ・イベリンと恋に落ちます。バリアン・オブ・イベリンの信頼度や統率力を認めている王ボードゥアン4世も、対イスラム強硬派のギーに軍を任せられないと考え、バリアン・オブ・イベリンに、シビーユとの結婚とイェルサレム軍の指揮を望まれますがバリアン・オブ・イベリンはそれを断りました。
王を継いだ息子ボードゥアン5世は、ボードゥアン4世と同じ病気でした。
俳優: エヴァ・グリーン
ギー・ド・リュジニャン
イェルサレム女王シビーユと結婚してイェルサレム国王となります。
現地生まれの諸侯や貴族たちはイスラーム徒と融和し共存を目指し始めたのに対し、ギー・ド・リュジニャンを先頭に、ルノー・ド・シャティオンや新着の十字軍や教会関係者はイスラーム徒との戦闘を望み、対立が激しくなっていました。シビーユも、祖父が血で勝ち取ったイェルサレムは、例えサラディンと戦うことになっても手放さない考えでした。恋に落ちたバリアン・オブ・イベリンは、シビーユのそんな考えにはついて行けませんでした。
ヒッティーンの戦いでサラディンに敗れ、捕虜になります。ギー・ド・リュジニャンの浅はかさが決断がイェルサレム陥落を招きました。
俳優: マートン・チョーカシュ
レーモン3世(ティベリウス卿)
トリポリ伯で、結婚でティベリアスを領地として得ています。イェルサレム王ボードゥアン4世の従兄の子で、フランク人でもっとも賢明な人物といわれました。
キリスト教徒とイスラーム徒の融和・共存を目指し和平を守るために努力しました。
ボードゥアン4世、ボードゥアン5世の摂政も務めましたが、常に強硬派のギー・ド・リュジニャンは対立しました。
本作ではレーモン3世(ティベリウス卿)はヒッティーンの戦いに従軍しませんでしたが、史実では不本意ながらも参戦しまし、サラディンは常に和平に協力的であったレーモン3世の逃亡に目をつぶったのでレーモン3世はトリポリへ戻ることができたそうです。
サラディンは、レーモン3世の夫人らにも、開城の際全財産を持たせて送り出したと言われています。
俳優: ジェレミー・アイアンズ
サラディン
本名をユースフ・ブン・アイユーブといい、エジプト アイユーブ朝の始祖です。
穀物や果物を産する豊かな町バールベックで育ち、ここで正確の良さが育まれたと言われています。(「サラディン伝」)
若年時から文武共に誉れが高く、出世して職責が高まるとともに贅沢を辞めるなど、機を読むことに長けていました。
第1回十字軍がイェルサレムを占領したとき、捕虜を皆殺しにしました。第3回十字軍のときも身代金の未払いを理由に同様の虐殺を行いました。でもサラディンは、敵の捕虜を身代金の有無に関わらず全員助けています。敵味方を問わずその人格は愛され、現在まで英雄としてその名を残しています。そのサラディンが自らの手で処刑したルノー・ド・シャティヨンは、それに値する悪事を重ねていたことがわかります。
ヒッティーンの戦いで勝利して十字軍国家の主力部隊を壊滅させ、念願のイェルサレムを奪還しました。
俳優: ハッサン・マスード
リチャード1世(獅子心王)
再び聖地イェルサレムの奪還を目的に第3回十字軍が侵攻します。この第3回十字軍に参加したイングランドの獅子心王リチャード1世がイェルサレムに向かう途中、フランスに帰った主人公バリアン・オブ・イベリンのところへ寄るシーンがあります。
獅子心王リチャード1世は3年間、イェルサレム奪還のために戦いますが失敗に終わり、サラディンと休戦協定を結びました。
「それから1000年、”Kingdom of Heaven (天の王国)”の平和は未だ遠い。」
イェルサレム
名言
父ゴッドフリーの遺言
主人公バリアンの父ゴッドフリー・オブ・イベリン(創作された人物)が死を前バリアンに言います。
「ひるまず敵に立ち向かえ。」
「神は勇気と正義を愛される。」
「たとえ死に至るとも常に真実を語れ。」
「弱気を助け 悪しきを行うな。」
「イェルサレム王を守れ。」
「王の亡き後は民を守れ。」
Nothing but Everything
主人公バリアンがサラディンに問います。「イェルサレムの価値は?」するとサラディンはこう答えます。
「Nothing but Everything」