コンスタンティヌスの凱旋門 ザ・ローマ帝国の興亡 第五話 コンスタンティン
コンスタンティヌスの凱旋門 ©Public Domain

コンスタンティヌスの凱旋門


コンスタンティヌスの凱旋門 (Arcus Constantini)

世界遺産「ローマの歴史地区と教皇領、サン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ聖堂」に登録された建造物のひとつ。イタリアの首都ローマにある古代ローマ時代の凱旋門で、ローマ建築の代表的なものである。西の副帝であったコンスタンティヌス1世が、ミルウィウス橋の戦いで正帝マクセンティウスに勝利し、西ローマの唯一の皇帝となった事を記念し315年に建てられた。

コンスタンティヌスの凱旋門

フランスのパリに建設されたエトワール凱旋門のモデルにもなっている。

構造

高さ21m、幅25.7m、奥行き約7.4m。3つの門を有し、中央の門が高さ約11m、幅約6.5m、左右の門が高さ約7m、幅3mであり、ローマにある凱旋門では最大である。構成は、フォルム・ロマヌムにあるセプティミウス=セウェルスの凱旋門のものを踏襲している。

基礎と下部構造は石灰華、最上部は煉瓦(外装は大理石)、円柱は黄色大理石、それ以外は白大理石から構成される。装飾は古い建築物からの転用材で、南北面の円形浮き彫りはハドリアヌス帝の時代の建築物から、最上層(アティック)の8枚のパネルは176年に建設されたマルクス=アウレリウス=アントニヌスの凱旋門からはぎ取られたものである。やはり最上層にある8体の彫像と南北面のパネル、中央の門の両側にあるパネルは、トラヤヌス帝が建設したトラヤヌスのフォルムからの転用材である。8本の黄色大理石の円柱も、由来不明だが、どこかの建物からもたらされたものと考えられている。これら以外の彫刻は、コンスタンティヌスの時代のものである。

各部浮彫の製作時代
各部浮彫の製作時代
  • 濃緑:トラヤヌス帝時代の浮彫
  • 黄色:ハドリアヌス帝時代の浮彫
  • 水色:マルクス=アウレリウス=アントニヌス帝時代の浮彫
  • 橙色:コンスタンティヌス帝時代の浮彫

マルクス・アウレリウス帝時代の浮彫

凱旋門両正面の左右の小さな通路の上のフリーズ部分に掲げられている4対8枚の浮彫は、マルクス=アウレリウス=アントニヌス帝(在位 161年-180年)に献じられた未知のモニュメントから移設されたもので、マルコマンニ戦争(162年- 80年)の場面を描いたものである。

北側面の左側の浮彫

皇帝のアドヴェントス(凱旋)とフラミニア街道で祝福されるプロフェクティオ(出撃)の光景を描いたもの。

北側面左 凱旋・出撃の場面
北側面左 凱旋・出撃の場面

北側面の右側の浮彫

ラルギティオ(勝利の報奨金)を配る皇帝と椅子に座り敗者のゲルマン人代表に引見しクレメンティア(寛容性)を示す皇帝の姿を描いたもの。

北側面右 褒章・寛容の場面
北側面右 褒章・寛容の場面

南側面の左側の浮彫

南側面の右の浮彫からの続きで、皇帝が敗者のゲルマン人代表に引見する姿や捕虜を見分する姿を描いたもの。

南側面 寛容の場面
南側面 寛容の場面

南側面の右側の浮彫

演説(Adlocutio)する皇帝の姿と、豚を犠牲に捧げる儀式ルストラリオを描いたもの。

南側面右 演説・犠牲の場面
南側面右 演説・犠牲の場面

トラヤヌス帝時代の浮彫

凱旋門の両側面のフリーズ部分および中央通路側面に掲げられている4枚の浮彫は、トラヤヌス帝のダキア戦争(101年-106年)の場面を描いたもので、トラヤヌスのフォルムまたはカエリウスの丘にあった皇帝の厩舎から移設されたと考えられている。この浮彫は縦3m、横30mの1枚のものであったが、凱旋門に取り付けるにあたって4分割されている。

西側面

西側面
西側面

東側面

東側面
東側面

中央道路西側面

中央道路西側面
中央道路西側面

中央道路東側面

中央道路東側面
中央道路東側面

ハドリアヌス帝時代の浮彫

凱旋門両正面の左右の小さな通路の上にある2枚1組の円形の浮彫(直径2.4m, 両正面で合計8枚)は、ハドリアヌス帝(在位 117年-138年)時代のものである。
この浮彫が造られた時にはハドリアヌス帝が描かれていたはずであるが、一部分はコンスタンティヌス帝やリキニウス帝(在位 308年-324年)、コンスタンティウス・クロルスのものに入れ替えられている。

北正面の左側

豚狩りとアポロ神への犠牲の場面。

豚狩りとアポロ神への犠牲
豚狩りとアポロ神への犠牲

北正面の右側

ライオン狩りとヘラクレス神への犠牲の場面。

ライオン狩りとヘラクレス神への犠牲
ライオン狩りとヘラクレス神への犠牲

南正面の左側

狩りへの出発とシルヴァヌス神への犠牲の場面

出陣・シルヴァヌス神犠牲
出陣・シルヴァヌス神犠牲

南正面の右側

熊狩りとディアーナ神への犠牲の場面

熊狩り・ディアーナ神犠牲
熊狩り・ディアーナ神犠牲

碑文

IMP(eratori) CAES(ari) FL(avio) CONSTANTINO MAXIMO / P(io) F(elici) AUGUSTO S(enatus) P(opulus)Q(ue) R(omanus) / QUOD INSTINCTU DIVINITATIS MENTIS / MAGNITUDINE CUM EXERCITU SUO / TAM DE TYRANNO QUAM DE OMNI EIUS / FACTIONE UNO TEMPORE IUSTIS / REM PUBLICAM ULTUS EST ARMIS / ARCUM TRIUMPHIS INSIGNEM DICAVIT
インペラトル・カエサル・フラウィウス・コンスタンティヌス(=コンスタンティヌス1世)偉大で / 敬虔、幸運なるアウグストゥスに対し元老院とローマの人民(SPQR)(が奉献する) / 神聖な導きと / 卓越した精神で / 暴君やそれら一味から / 一斉に開放した / 正当な軍事力を用いて(勝利した) / 装飾した凱旋門(を奉献した)

世界遺産「ローマの歴史地区と教皇領、サン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ聖堂」地図

ローマの歴史地区と教皇領、サン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ聖堂

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