旧約聖書 Old Testament
前10〜前1世紀のあいだにまとめられたユダヤ教の教典。イスラエル人の伝承や預言者のことばが、主にヘブライ語で記された。特に最初の五つの書である、「創世記」や「出エジプト記」などがトーラー(モーセ五書)と呼ばれ重視される。ユダヤ教ではこれのみが聖書であり、『新約聖書』を教典とは認めていない。
旧約聖書
前10〜前1世紀のあいだにまとめられたユダヤ教の教典。イスラエル人の伝承や預言者のことばが、主にヘブライ語で記された。特に最初の五つの書である、「創世記」や「出エジプト記」などがトーラー(モーセ五書)と呼ばれ重視される。ユダヤ教ではこれのみが聖書であり、『新約聖書』を教典とは認めていない。
オリエントと地中海
世界古代オリエント世界
ヘブライ人とユダヤ教
ヘブライ人は、古代オリエントで一神教を信じた唯一の民族といえるが、彼らがヤハウェを唯一最高の神として認め、これと契約関係に入ったのは、出エジプト後パレスチナに入るまでの苦難の中においてであった。王国時代には周辺民族の多神教の影響をうけて、預言者たちに厳しく批判されたが、亡国とバビロン捕囚という民族的苦境のなかで、かえってヤハウェへの信仰は強まり、やがて神と契約しているユダヤ人だけが救済されるという排他的な選民思想や、この救済を実現する救世主(メシア)の到来を待望する信仰が生まれた。『旧約聖書』の編纂が始まったのもこのころからである。ユダヤ人は捕囚から開放されて帰国すると、イェルサレムにヤハウェの神殿を再建し、儀式や祭祀の規則を定めてユダヤ教を確立した。そこで説かれた最後の晩餐や、天使・悪魔の思想にはペルシアのゾロアスター教の影響が指摘される。のちにユダヤ教が、信仰や日常生活の規則である法律を極端に重んじるようになると、イエスが現れて、形式化した信仰に新しい生命を吹き込むとともに、救済をユダヤ人に限らず全人類に及ぼす道を開いた。なお、ヘブライ人が書き残した神話・伝承・預言者の言葉、神への讃歌などをまとめたユダヤ教の経典は『旧約聖書』として、イエスの教えや弟子たちの行伝・手紙などをまとめた『新約聖書』とならんでキリスト教の経典となり、のちにヨーロッパ文化の基調のひとつ(ヘブライズム)を形成することになる。またイスラーム教でも、前者は経典と認められている。ちなみに「旧約」とは「神との古い契約」の意味で、「神との新しい契約」としてのキリスト教に対照させて、パウロがこう呼んだのに由来している(『新約聖書』の「コリント人への第2の手紙」第3章にこれらの言葉がある)。