バルトロメ・デ・ラス・カサス
バルトロメ・デ・ラス・カサス (インディアス総合古文書館蔵)©Public Domain

バルトロメ・デ・ラス・カサス


バルトロメ・デ・ラス・カサス( A.D.1484〜A.D.1566)

スペイン出身のドミニコ会宣教師。西インド諸島とメキシコでの布教を目的に、コロンブスの第4回航海に同行し、コンキスタドールの非人道的な残虐行為を目にし、スペイン王室に「14の改善策」を送ってエンコミエンダ制廃止を訴えた。著書『インディアスの破壊についての簡潔な報告』などで植民者の残虐さを根気強く告発し続け、ついにはエンコミエンダ制の段階的廃止を承諾する「インディアス新法」を成立させた。

バルトロメ・デ・ラス・カサス

植民者の残虐とインディオの悲惨を訴え続けた

西インド諸島とメキシコでの布教を目的に、ラス・カサスは、コロンブスの第4回航海に同行した。ここで目にしたのは、スペイン人による略奪と暴行、それに対する現地人の反乱であった。キューバではエルナン・コルテスにも出会った。当時、スペイン国王は、植民者が原住民をキリスト教化させる代わりに、彼らを労働力として使用することを認めていた(エンコミエンダ制)。酷使されて死んでゆくインディオたちを見たラス・カサスは、良心の呵責に耐えかね、スペイン王室に「14の改善策」を訴えた。

その後も著書『インディアスの破壊についての簡潔な報告』などで植民者の残虐さを根気強く告発し続け、ついにはエンコミエンダ制の段階的廃止を承諾する「インディアス新法」を成立させた。

バルトロメ・デ・ラス・カサス
バルトロメ・デ・ラス・カサス (インディアス総合古文書館蔵)©Public Domain

ラス・カサスの報告によると、スペイン人たちは、インディオの母親から幼児を奪って手足を切り刻み、腹をすかせた猟犬に与えるなど、残虐非道の限りを尽くしたという。

ラス・カサスの著作は各国に出版されたため、スペインは諸外国から痛烈な批判を浴びた。それは国力の衰え始めていたスペインの凋落ちょうらくに拍車をかけることになり、カサスは国の誇りを失墜させた男と非難された。
バルトロメ・デ・ラス・カサスから「札付きの無法者」と呼ばれたフランシスコ・ピサロは、インディオたちの食糧を奪い尽くし、凶作に備えていた最後の食糧まで差し出させた後、彼らを切り殺したという。
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近代ヨーロッパの成立

ヨーロッパ世界の拡大

スペインの植民地経営

スペイン本国には国王直属のインディアス評議会がおかれ、アメリカ大陸の植民地の裁判、役人・聖職者の任命もおこなった。植民地ではアウディエンシアと呼ばれる統治期間が行政を担当した。植民者は、エンコミエンダ制により、征服地の土地・住民の統治を委託され、先住民を強制労働にかりだした。西インド諸島・アンデス地方・メキシコなど各地において先住民は酷使・虐待され、またヨーロッパ人がもちこんだ疫病などで、急激に人口を減らした。先住民の惨状をみたドミニコ派修道士バルトロメ・デ・ラス・カサス(1474〜1566)は国王に報告書を送り、エンコミエンダ制廃止を訴えた。

スペインが新大陸を植民地として領有したのち、「先住民」の取り扱いをめぐって、いわゆるアリストテレス論争がおこった。入植者たちは先住民を奴隷的使役を合理化するために、アリストテレスの権威をかりた。インディオは「野蛮人」でアリストテレスの政治学にあるように他人から支配され、統治される必要がある奴隷としてつくられた存在である。それに対してスペイン人は政治生活や文化生活をするようにつくられている。したがって、インディオが奴隷とされるのは当然というのである。一方、ラス・カサスは『インディオを弁ず』でインディオの社会を分析し、彼らも組織的国家もつくっていることで、インディオは完全に理性的存在であり、自治の能力を有し、キリスト教徒に改宗させることも可能とし、インディオの権利を弁護した。彼らが「野蛮」出ないことを例証しようとしたのである。ミシェル・ド・モンテーニュは『随想録』のなかで「すべての人間は、自分とやり方が違えば、これらを野蛮という」と述べている。

ヨーロッパ人が「文明」「理性」に対置して「野蛮」とみなす地域を植民地として支配し、「野蛮」な住民を統治・支配するのは当然という独断は、以後も長く欧米一般人の意識を支配してきた。アジア・アフリカにおける植民地支配、アメリカ合衆国のインディアンの扱いにもそれがよく表れている。一部の知識人を例外として「野蛮」な「先住民族」の権利をも尊重しようという意識はそう一般的なものではなかったのである。

ラス・カサスの伝えるスペイン人の残虐行為

バルトロメ・デ・ラス・カサスは1552年『インディアスの破壊についての簡潔な報告』を印刷公刊し、そのなかでキリスト教徒のスペイン人のアメリカ大陸先住民に対する非道な所業を詳述している。「非道で血も涙もない人たちから逃げ延びたインディオたちはみな山に篭ったり、山の奥深くへ逃げこんだりして、身を守った。すると、キリスト教徒たちは彼らを狩り出すため猟犬をどう猛な犬に仕込んだ。犬はインディオをひとりでも見つけると、瞬く間に彼を八つ裂きにした。犬は豚を餌食にするよりもはるかに喜々として、インディオに襲いかかり、食い殺した。こうして、そのどう猛な犬は甚だしい害を加え、大勢のインディオを食い殺した。

インディオたちが数人のキリスト教徒を殺害するのは実に稀有なことであったが、それは正当な理由と正義にもとづく行為であった。しかし、キリスト教徒たちは、それを口実にして、インディオがひとりのキリスト教徒を殺せば、その仕返しに百人のインディオを殺すべしという掟をさだめた。」

インディアスとは当時スペインが征服した西インド諸島、中央・南アメリカなどの地域を総称したもので、その地域の先住民はインディオと呼ばれた。

スペインの植民地経営 – 世界の歴史まっぷ

詳説世界史研究

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